ついに出た!貸本研究の決定版
「貸本マンガRETURNS」
2006/4/13

 珍しく、というか初めて新刊の紹介です。
 「こんな漫画みっけ」のコーナーでもたびたび登場する"貸本"。
 その貸本を研究した数少ない書籍の中でもなかり充実した内容の本がついに登場しました。
 それが今回紹介する「貸本マンガRETURNS」2006年の3月に出版されたばかりの新刊です。

   今や、どこにでもあるビデオレンタル屋さん。昭和20から30年代、当然そんなお店はありませんでした。
 でも、そのようなシステムのお店はありました。それが貸本屋さんです。  昭和30年代には貸本ブームが訪れ、最盛期には全国に3万店もあったといわれています。漫画界にもそのブームはやってきます。「刑事」、「影」などといった一般書店には並ばない、貸本屋専門の漫画雑誌なども創刊され。大いに賑わいを見せます。
 あの手塚治虫でさえも貸本雑誌「X」に『刹那』を掲載させるなど、そのブームは一般漫画界で活躍してきた作家たちにも脅威でした。
 辰巳ヨシヒロにより『劇画』が生まれ、さいとう・たかを、佐藤まさあきなどといった作家が生まれ、また怪奇漫画からは楳図かずお、水木しげるが登場。また白土三平、水島新二など、現在活躍する漫画家が貸本界から次々に生まれました。
 貸本向け少女漫画からも矢代まさこ、花村えい子、浦賀千賀子など多くの作家を生み出しました。
 しかし、そのブームも次第にかげりが見え始めます。
 まず漫画は教育に良くないという悪書追放の動きが出てきたこと。とくに貸本漫画特有の「劇画(とくにハードボイルド系)」というジャンルは全国のPTAなどから槍玉にあげられました。また、昭和30年代に「少年マガジン」、「少年サンデー」といいた週間漫画雑誌が創刊されることで、子供達にも安価で簡単に漫画を手に入れられるようになりました。
 昭和30年代後半、貸本漫画は次々に廃刊、貸本屋もみるみるうちにその数を減らしていきました。
 冒頭でレンタルビデオのようと書きましたが、利用者は低所得者が多かったようです。おそらく裕福な家庭の人たちは本を買って読んでいたのでしょう。

 さて、この本を書いた"貸本マンガ研究会"は不定期に「貸本マンガ研究史」という機関紙を出版しています(この記事執筆時点で14号まで刊行)。私も「長井勝一漫画美術館」のHPを担当している関係で、この機関紙を送っていただいています。こちらはどちらかというと一般向けには難しい(というか本当の研究本なのでディープ)な内容ですが、「貸本マンガRETURNS」にほうは貸本というものをまったく知らない方でもすんなり受け入れられる内容だと思います。

 戦後の混乱の中から発生した今は無きサブカルチャーの1片をぜひこの本で体験してください。